森林の土地を相続したら・・・

 こういうケースもあるのですね!

 地域の無料相談会でいろいろ勉強させて頂いている今日この頃ですが、「相続」や「贈与」といってもその額や財産の種類は千差万別。地方ではこうした森林を相続するケースもよくあるようです。一瞬とても羨ましいことと思ったのですが、突如、森林が生い茂るまたは枯れ散らかした土地を取得することになった場合、今後の維持や土地整備についてちょっとばかり頭を悩ませることになりそうです。もしも、相続や贈与で森林の土地を取得した場合は、地域開発の問題も絡んでくる場合があるため、きちんとした届出をすることが必要となります。(平成24年4月 森林法改正)

 

 届出が必要な理由は以下のとおり。

1. 行政が必要に応じて森林所有者に対して助言等をすることができるため

2. 事業体が間伐等をする場合に所有者に働きかけて森林を集約化し効率を上げられないことから、森林の土地の所有者の把握を進めるため

 

 この法改正により、林野庁の「森林・林業再生プラン」を具体化することとなりました。

 プラン概要は、2020年までに日本の木材自給率を今の約2.5倍の50%にすること(木材生産1,800万㎥→4,000万㎥~5,000万㎥)。また、間伐放棄地を含め資源利用すると決めた森林を30~50ha単位にまとめて作業道・作業路をつくり、これまで不採算で切り捨てていた間伐材を搬出できるようにしたり、材木利用できない幹や根および枝葉などをバイオマス燃料に利用することで新たな雇用も確保しようというものです。ところが、その問題点として、小規模に所有された民有林の集約化が困難なこと、故人名義のままの放置林や相続分割で境界や所有者が不明の森林が多々あることが挙げられます。林地については、国土の7割も占めていながら、林業衰退で地籍調査も遅れており、まったく手入れされていない人工林が野生生物の生息環境の質を下げているという問題も、全国共通のことだそうです。

 

 これらの背景を理解したうえで、法改正の要点を確認しておくと

1. 森林所有者が不在or不明の場合でも、市町村長の判断で使用権を設定でき、調査のための立ち入りや作業路整備、森林整備などが実施でき、間伐放棄地を行政の手で管理できるようになる。

 

2. 現行の森林計画制度を見直し、森林所有者には届出を義務付け、林地戸籍を整備する。

 

3. 国や自治体などがするべき仕事を明確にし、境界の確定、施業集約化の推進、特に重要な保安林の買い入れなどの規定の追加。

 

という内容です。

木材の安定供給力の強化、雇用も含めた地域再生、地球温暖化対策、生物多様性保全など、さまざまな対策の具体化に結び付きますね。

 

 届出が必要な場合を具体的にいいますと、個人(法人)が売買契約、相続、贈与、法人の合併により、森林の土地(都道府県が作成する地域森林計画の対象となっている森林。登記上の地目によらず、取得した土地が森林の状態となっている場合は届出の対象となる可能性が高い→自治体に要確認!)を新たに取得した場合に、事後の届出として「森林の土地の所有者届出書」(自治体に様式あり)の届出が必要です。その面積の基準はなく、たとえ小さな面積でも対象となります。(ただし、国土利用計画法に基づく土地売買契約の届出をした場合には所有者届出は不要→市街化区域:2,000㎡、その他の都市計画区域:5,000㎡、都市計画区域外:10,000㎡ これら以上の面積の場合には事後届出が必要!)

 

 その方法について。

所有者となった日から90日以内に取得した土地がある市町村の長に届出る

・相続の場合は、(財産分割がされていない場合でも)相続開始の日から90日以内に法定相続人の共有物として届出をする。

 

 また所有者となった場合、立木の伐採を行うときは市町村の長に伐採及び伐採後の造林の事前届出、1ha超の林地開発を行うときは知事の許可が必要となります。(保安林では、立木の伐採等及び土地の形質の変更について知事の許可等が必要です)

 

 最後に、届出を怠った場合または虚偽の届出をした場合は・・・

10万円以下の過料が課されることがあります!

 

  空き家問題にも通ずるところですが、自治体がきちんと現在の所有者を把握しておくことはとても重要なことです。ちょっと面倒に思いがちですが、(ま、いいか)と楽天的に済ませてしまいがちですが、なにかお心当たりのある方は、さっそく名義変更や必要な届出をしておきましょう!