「夫婦の名字をめぐる争い」提訴へ

 ちょうど先日、このブログでも「選択的夫婦別氏制度」について述べ、結果的に庶民はニックネームでいいんじゃないか説にたどり着いたところなんですが。(我説)

 

 夫婦同姓規定について、事実婚の男女4組が今月中に、別姓の使用を求める申し立てを家裁に行うことがわかりました。今回と同様の裁判で、2015年最高裁が合憲と判断したケースがあります。

 この判決では、「氏名は人格の象徴であり、人格権(By.憲法13条)の一部を構成する」と述べられました。人格権とは、いわゆる幸福追求権から導かれる権利であり、とはいえ憲法は名字の変更を強制されない自由までをも保障していないと示しました。個人の尊重よりも家族の絆を重視した結果といえます。

 そして、最高裁は「選択的夫婦別姓に合理性がないとまで断ずるものではないが、社会の受け止め方によるので、制度のあり方は国会で議論されるべき」としました。最高裁裁判長も「司法の場での審査の限界を超えている」という補足意見を出し、解決を国会に委ねるのがふさわしいという考えを示しました。

 このように、2015年判決については、司法の消極的な姿勢が見られました。

 

 夫婦同姓を法律により義務付けている国は、現在日本だけのようです。

かつては、日本のように同姓を採用していた国々も、その多くは90年代までに別姓も選択できるようになりました。90年代といえば、ちょうど日本でも社会進出する女性が増え始め、夫婦同姓について不利益が訴えられはじめたころです。

 こうした背景からも、政府は、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)からたびたび是正を勧告されているようです。

 

 「結婚や家族に関する事柄は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況を踏まえ、総合的に判断して定められるべき」。これは最高裁のことばですが、合憲判決がでた2015年からまだ年月の浅い今、果たして夫婦のあり方やライフスタイルの多様化について、どれだけ寄り添った判決になるのか。とても興味深いところです。

 

 ところで、今回裁判を起こす男女のカップルは、別姓使用を求める裁判と併せて、夫婦を別姓とする婚姻届を受理しない自治体や国に対しても、損害賠償請求を訴えるそうです。原告は4組で、それぞれ管轄の家裁に申立てを行いますが、うち3組は東京都、ほか1組は広島県。東京都では、同姓カップルについても柔軟な対応を示す自治体もあるため、判決に地域性がでることも考えられますよね。

 

 事実婚カップルもあれば、同性カップルもある。母子家庭もあれば、父子家庭だってある。個々の状況を細かく枝分かれさせて、法律により選択肢を持たせることはかなり困難な現実ではあります。ちなみに、日本のフェイスブック登録では、性別の選択肢は2つのみですが、海外だと50通りもの選択肢が用意されている国もあるといいます。

 今後日本では、どこまでこの多様化を法で守ることができるのか。これはとても大きな問題であり、興味深いです。