資金調達のスタンダード、クラウドファンディング!

 今日では耳にする機会も多いその名前、クラウドファンディング(以下、CFと表記します)。資金調達法のひとつで、特定のプロジェクトやベンチャーの資金を集めるために、多くの人々から少額の寄付を通して出資を集めるというもの。呼びかけ人は、一定の目標額に到達したらプロジェクトを実行することで、資金調達のリスクを低減することができるのです。これと同時に、そのプロジェクトについての告知や宣伝活動にもつながるため、賛同者を得ることで活動の活発化も期待できる。こうした仕組みから、昨今では企業から個人まで、多くの人がCFを活用する動きがでてきました。

 

 そのなかで、私が注目しているのが鉄道会社におけるCF利用例。車体の老朽化や赤字路線などの影響で、昔から長く親しまれてきた車体が引退となるケースも多々あります。

 そのひとつ、かつて東急電鉄で、「青ガエル」の愛称で親しまれた車両がありました。「青ガエル」は100両以上が製造され1954年から東急電鉄の主力車両として活躍しました。この東急を引退した86年以降は、各地の私鉄に活躍の場を移すことになりますが、そのうちの最後の現役車両となる車体が、熊本電鉄において2016年2月に営業運転を終えたのです。そして、この後解体される予定でした。ここで別れを惜しみ、声を上げたのが鉄道ファンです。「ラストラン」を控えた姿がテレビで放映されると、何とか車体を保存できないかと他の地域からも問い合わせが殺到。最後の運転の日には駅のホームに多くのファンが溢れかえったのです。これら鉄道ファンの熱い想いに触れた熊本電鉄の運輸局長は、鉄道ファンの層の厚さとその情熱をしっかり受け止め、車体を保存することで赤字であった鉄道事業のまたとない集客手段になることを期待し、保存を決めたのだそうです。そこで、昨年秋に熊本電鉄と熊電ファン有志がCFで出資を募ったところ、目標額であった200万円を上回る256万円が集まったのです。この成果により、最後の「青ガエル」は今後、運転体験会を開くなどして集客手段として活用するため、保存されることとなりました。

 

 ところで、鉄道へのCF活用のきっかけとなったのが銚子電鉄(千葉県)です。銚子電鉄では2014年に脱線事故を起こし、壊れた車両の修理費が出せず減便に追い込まれ、経営危機を迎えていました。これを知った地元の鉄道ファンが、ネットで資金を募る方法があると銚子電鉄に提案し、CFを活用することになりました。その結果、目標の300万円を大きく上回り500万円以上が集まったのだそうです。この資金が無事に車体などの修理費用に充てられ、2015年春からその車両は運転を再開することができました。

 また、これまでにJR北海道の711系電車「赤電」や寝台特急「北斗星」の客車など、引退した列車や駅施設のお色直しなどにもCFが活用されてきました。

 この鉄道とCFとの相性について、CF運営の大手は「通常は期間内に目標額に達するCFは75%ほどだが、鉄道関連はほぼ100%である。鉄道ファンは仲間意識が強く、協力が得やすい」という特徴を挙げています。

 出資者には、「返礼」として車体見学ツアーや、特別イベントへの招待という待遇も用意されているため、出資したら終わりというのではなく、その後も存続して鉄道会社と出資者との絆は続いていくという素晴らしい効果もあるのです。

 

 また違うところでは、「祭り」の主催者もCFを活用する動きが出てきています。関西ではここ数年、天神祭や祇園祭といった三大祭とされる伝統ある大規模な祭りでさえ赤字を抱え、続行困難な問題を抱えているといいます。祇園祭山鉾連合会は、昨年に引き続き今年もCFで資金を募ることを発表しています。国内だけでなく海外からの見物者も多く訪れるようになり、その分年々警備費やゴミ処理対策に費用がかかるようになってきたため、そこへ資金を活用させるのだそうです。目標額は300万円。5,000円、10,000円、10万円の3コースから選ぶようになっていて、「返礼」は、厄除けちまきのプレゼントや、連合会理事長らとの昼食会への参加(!?)など、額に応じたものが用意されています。ちなみに、昨年のCFでは目標額300万円に対して1,400万円が集まったといいます。これはもう、募金よりも確実で迅速な資金調達の手段として定着したのではないでしょうか。こうした伝統的な行事を、現代の最新版の手法により調達した資金で次世代に継承していく。なんとも不思議でたくましい仕組みです。

 

 私もいつか、手元に有り余る財産があるなら「コレ!」というものに出資したいなぁと思っております。

まずは出資を呼びかける立場を経験してみたいな。。  (夢)