「就活スーツ」考

 つい先日新学期が始まったかと思えば、もう就活シーズン真っ盛りの時期を迎えています。

私たちが就活していた数十年前から変わらず、就活スーツといえばやはり黒が圧倒的に多いですね。そしてちょっと寒い時期にはベージュのトレンチを羽織るというのも伝統スタイルとなっています。(アパレルや広告代理店、航空会社などは個性重視の華やかな服装で挑むイメージがありますが)

 

 数か月前、朝日新聞社の採用チームがツイッター上で「各社の採用担当のみなさんへ、『リクルートスーツで来なくていいですよ』と共同宣言しませんか?」と呼びかけたところ、5千回以上リツイートされ、多くのメディアでも取り上げられるところとなりました。それにも拘わらず、その後もスーツ姿でない学生(受験者)はほぼゼロだったといいます。無難な黒スーツで受験するスタイルは、それほど定着しており、もはやグレーやベージュのスーツですらちょっと場違いな感じがしてしまうそう。他にも、黒スーツにこだわる理由として「もし違う色のスーツで合同説明会に参加していたとしたら不安だったはず」、「採用担当者に変に思われて、自分の話を十分に聞いてもらえなかったら怖い」、「まわりと同じだと考えなくていいので楽。服装よりもっと大事な面接対策に時間を割きたい」という声がありました。

 一方、少数派の脱スーツ派の意見では、「レールに乗った人生の通過儀礼のようで違和感がある」、「服装だけで判断し、話を聞いてくれない企業だとしたらそこには就職したくない」というものがありました。

 

 いくつかの就職試験を受けた私としても、本当のところどちらの選択がいいのかアドバイスが難しいところです。企業によりそのカラーは違いますし、また面接の担当者によっても趣向や価値観が違います。ある企業の採用担当者は、「スーツ姿で借りてきたネコのような学生より、ありのままの姿を見たいから普段着を推奨する」といいますし、また違う企業の担当者は、「こちらが学生を見る場なので、それなりの格好で来てもらいたい」、「就活生らしい恰好をすることも大事」、「立場をわきまえた格好ができる人が欲しい」など、やはり企業側としても(黒)スーツ着用を推奨するところが多い印象です。

 この件について、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、14年に企業の人事担当者1304人にアンケートをとった結果、その約半数が面接や説明会で「私服OK」とする場合があると回答したうえで、「ただ、私服OKの意味を考えた上でリクルートスーツを選択してほしい」という声もあり、もうなに着たらええねんというカオス満載の見解が繰り広げられていました。

 また、ある学生の体験談では、私服OKとされる商社の就職イベントに行くと、社員全員がノーネクタイながらスーツ姿で当惑したそうです。逆に、私服OKの説明会にスーツで参加した学生が社員に注意されたという事例もあるようです。

 

 これらの情報から考察すると、結局はその企業のカラーをうまくキャッチするということが大前提なのでしょう。合同企業説明会、インターンシップや先輩訪問などで社風を感じとり、そこへ就職した自分はどのような仕事をしたいのか。その仕事に携わるためにはどのような服装が相応しいのか。目指したい先輩や上司はどのような雰囲気のスタイルなのか。そのあたりを意識すれば、自ずと面接でアピールするポイントが見えてくるし、それをアピールするためには無難に(黒)スーツで挑むのか、服装から個性をトータルプロデュースして挑むのか、最良の選択肢が見えてくるのだと思います。もちろん、個性的な受験者を歓迎する企業だってあるはずです。自分の価値観が、どれだけその企業とマッチするのか。大切なのはそこ!あとは清潔感と信頼感をアピールできる服装を心がければよいのではないでしょうか。

 

 私たち行政書士にも言えることですが、身だしなみを整えて、「良い雰囲気」で相談業務にあたることは重要なことです。「行政書士」全体のイメージを底上げするためには、やはり品格と清潔感も大切な要素なのです。

 ちょっと話は変わりますが、行政書士会の研修に参加するとき、よく個性的な格好の先生を見かけます。ハンチングを被った方や、野球チームのユニホーム姿のような方、業界人のようなカラフルスーツで来られる方もおられます。これはたぶん個人事業主であるから、個性を大切にされているためなのだと思い、いつも興味深く先生方の服装チェックをさせて頂いております。研修会なのでそれほど堅苦しくなくていいし、服装の決まりなどないのだけど、新人の私としてはやはりここはスーツかなと、最初のころはスーツで受講していました。受講人数の少ない研修だと、特に目につきやすいので、講師の先生への失礼に当たらないようスーツの方がいいですしね。ですが、半年ほど経ったころから、リラックスして受講できる恰好が一番と思い、わりとラフな格好で受講するようになりました。(デニムは避けてますけど)

 このような場でも、またこんな社会人でも、公の場での服装について悩むことが多々あります。そんなときは、やはり無難なスーツを選ぶことになるのです。だから、「考えなくて楽だから」と黒スーツを選ぶ気持ちはよくわかります。

 

 ただね、黒スーツにベージュのトレンチ集団をはたから見ていると、かなり不気味だしおもしろくないなぁと思ってしまうのです。もしも私の事務所で面接する機会があるなら、、、デニム、スニーカー、ユニホーム、着ぐるみ以外ならOKかな。うちの事務所のイメージを感じて、それに合わせたコーディネートをして来てくれたら嬉しいです!