「おひとりさま」考~終活に備える制度~

 地域の無料相談会などで、断トツに多い内容が遺言・相続のご相談です。

そのなかで、独身や兄弟(姉妹)もおらず、一人暮らしの高齢者の方からのご相談も増えてきています。俗に言われる「おひとりさま」の立場である方からのご相談ですが、もしも急に体が弱ってしまったら、ある日突然死を迎えたらなど、大なり小なり心配を抱えておられるのです。特に最近、大規模な自然災害が頻繁に起こったせいもあるのかもしれません。その、もしものときに備えて知っておいた方がいい制度をご紹介します。

 

 まず簡単にタイムテーブルを組み立ててみます。

A. 現在・・・心身ともに健康な状態(日常生活に支障がない)

B. 体(心)が弱ってしまったとき・・・判断能力はあるが体が不自由(または、認知症などで判断能力が乏しい)

C. 死後・・・葬儀のことや遺品整理、財産分与など(死後事務)

このように3段階に分けます。

 

 たとえ現在がAだとしても、前述のように、ある日突然BやCの状態になることがあるかもしれません。そのときのために備えるのが、「成年後見契約(任意)」や「公正証書遺言」です。これらは、思い立ったらなるべく早くAの段階で用意しておきましょう。Bの段階でのお悩みに重きを置くのか、またはCの段階でのお悩みに重きを置くのかにより、ほかにも専任的な契約制度がありますが、今回は成年後見契約(任意)と遺言書についてご紹介します。

 

 まず「成年後見契約(任意)」とは、Bの状態になったときに、病院や介護サービスの契約、また財産管理などを行ってもらう契約です。契約を結ぶ相手は、信頼できる知人でもいいです(この場合、報酬の有無や金額は相手方との任意条項です)し、また、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家(この場合は確実に報酬が発生します)に依頼することもできます。この契約は、あらかじめ公証役場で作成しておくことで、Bの状態になったときに家庭裁判所を通して開始されますので、Aの段階できちんと作成・締結しておくことが必要です。

 

 つぎに「公正証書遺言」とは、公証役場で作成する遺言書のことです。Cの段階を迎えたときに、生前の自分の意志通りに葬儀や遺品のこと、また財産の仕分けなどを施行させることができます。自分で作成し保管する遺言書との違いは、作成も保管も公証役場ですることになるので、紛失や偽造、改ざんの心配もありません。また、第三者(公証人)が関わっているため、この文書が真正であると強い推定が働きます。要するに「公文書」

として通用します。そのため、自分で作成したメモ程度の遺言書とは比べものにならないぐらい、強い執行力があるのです。

 

 これら2つの契約書類は、公証役場にて作成・保管されるため、「おひとりさま」には特に強くおすすめしたい制度です。終活を考えるにあたり、ぜひとも心身ともに健康なうちにプランを立ててみてください。

 わたしたち行政書士も、お一人おひとりの状況に合わせた契約内容や遺言内容の作成をサポートさせて頂きますので、どうぞお気軽にご相談くださいね。