在留資格~対象業種拡大へ向けて動く~

 建設、介護、漁業、製造、、、さまざまな業種で人手不足が嘆かれています。

このたび、その悩みを抱える中小企業からの要望により、これまでの外国人受け入れ制度のあり方についての見直し検討が一気に加速しました。6月の「骨太の方針」に、新たな在留資格を設ける構想が入ったのです。これにより、政権は来年春の制度開始を目指し、今秋の臨時国会に関連法案を出す方針です。

 

 新設される在留資格の対象業種は、建設業や農業などの単純労働も含む見通しなので、日本での就業を目指す外国人にとっても、人材不足に悩む雇用側にとっても「やっとか!」という思いがあるでしょう。

 現状では、例えばホテルやレストランなどで外国人を雇用しようとなると、フロントやホール業をメインで行うというのでは就労系の在留資格は下りません。あくまでも、その外国人でなければできない高度な専門性をもつ「通訳」や「現地での顧客開拓のための営業」、または、「そのシェフでなければ作れない外国料理のプロフェッショナル」という特異な感受性や高度な技術をアピールしなければ雇用は難しい状況です。

 新在留資格が登場すれば、このような分厚い壁を取り除き、スムーズなマッチングが実現することになるのでしょう。

 

 ところが、この政策があまりにも急展開を見せているため、雇用する側には混乱が広がっています。

7月に経済産業省が製造業の業界団体を対象に開いた説明会では、「要件を満たせば製造業も対象になる」との説明はあったが、新設の見通しとなる具体的な対象業種は明示されないまま。また、「技能実習制度との違い」や「求められる技術や日本語のレベル」についてなども、まだ具体的に示されませんでした。

 

 あるいは、現在技能実習制度の対象業種となっていても、細かく作業が分かれているものについては、対象作業とそうでない作業とがあるため、その業種のなかのすべての作業を一概に任せることはできないのが現状です。

 「技能実習計画審査基準」の定義を用いると、例えばビルクリーニング職種のビルクリーニング作業では以下のとおり。

 

〈必須作業〉

1.(1)及び(2)並びに2.の作業を必ず行い、1.(3)の作業は必要に応じて行うこと。

1. ビルクリーニング作業

(1)作業の段取り (2)クリーニング作業 (3)ベッドメイク作業

2. 安全衛生作業

 

 このように、1.(3)であるベッドメイク作業をやるなら全体の1/3程度の割合で行わなければならないのです。

そして、類似のハウスクリーニング作業は対象作業から除外されます。

 

 もう一例、惣菜製造職種(惣菜加工作業)の定義は、

「大量製造用調理機械(対象機械の参照表あり)を使用し、食材原材料の下処理、炊く、ゆでる、揚げる、炒める、煮る、焼く、蒸す、和える等の調理加工及び殺菌処理等により惣菜加工品を製造する作業」であり、1回300食以上又は1日750食以上を提供する調理施設でなければなりません。学校給食や病院給食などトレー等で持ち運びする場合は対象外とされています。

 

 このような超専門的カテゴリーを設けている現状から、はたして就労系新在留資格ではどのような柔軟性を盛り込んでくるのか、とても期待しているところであります。

 

 私たちに身近なコンビニエンスストア(以下、「コンビニ」とします。)もまた、外国人なしではもう営業を維持できないほど人材不足に悩む業界のひとつです。

 先日、よく利用する近所のコンビニに新しいスタッフが加わっていました。カタコトすぎる日本語で接客をしていたので、おそらく来日したての留学生アルバイターでしょう。そのような、日本語もままならないような外国人を雇用するほど、人材不足が深刻なのだと実感したところでした。オフィス街である中央区のとあるコンビニでは、スタッフは外国人オンリーというところもあるほどです。この店舗の店長=教育係は中国人。そしてレジ端末は、タッチパネルで切り替えることにより、操作側の言語が主要アジア各国語に対応するようになっているというダイバーシティぶり。最先端です!

 

 新在留資格により、このような現象がさらにいろいろな職場で展開されることになるなら、就業者の在留資格管理や法律順守の教育、また防犯対策など、制度任せではなく、受け入れる側にもきちんとしたルール作りとそれを順守する姿勢が要求されますね。

 

 制度開始目標は来年の4月。当事務所も何か(?!)動き始めなければという得体の知れない気合が入る今日この頃です。